コラーゲンブースターと呼ばれることのあるエランセという注入剤をご存知でしょうか?
エランセは慎重な注入手技が必要なこともあり、まだ取り扱っているクリニックは少ないのか、大阪だけではなく遠方から来院される方もいらっしゃいます。本ブログでは、エランセの魅力や注意点などについて解説しますね。
エランセの成分は?作用と効果は?
エランセは手術で使われる吸収糸にも用いられるPCL(ポリカプロラクトン)が主成分です。このPCLが30%と基剤であるCMC(カルボキシメチルセルロース)が70%の割合で配合されている皮膚充填剤になります。
当院で用いているエランセMは2年半〜3年ほどで完全に吸収されます。しかし、吸収される過程で、周囲の線維芽細胞を刺激しコラーゲンの生成を促すという作用があり、製剤が吸収された後もハリや艶などコラーゲン増生効果が長く保たれるという特徴があります。
エランセの副作用・注意点・危険性は?
優れたコラーゲン増生効果をもつエランセですが、注意すべき点もあります。
それは溶解剤がないことです!
最終的には完全に吸収されて体内に異物として残ることはありませんが、注入直後に溶かすことは出来ません。ですので、溶かす必要が生じないような注入法が求められます。具体的には、注入量は極少量ずつに留めて薄く塗り広げるような注入が適しており、1ccの注入でもかなり時間がかかります。
また、エランセに限らず、フィラー注入(ヒアルロン酸など皮膚充填剤の治療)での重篤な合併症のひとつが血管塞栓です。血管塞栓とはフィラーが血管内に誤注入されたことにより血管が詰まってしまい、皮膚が壊死したり、視力障害が生じる合併症のことを指します。エランセの場合、ヒアルロン酸と違い、溶解剤がないので、血管への誤注入を避けるべく、より慎重な操作が求められます。
このようなリスクはあるものの、最終的に完全に体内で吸収される安全性は高く評価されている注入剤であり、欧州CEマークを取得、また米国FDAにも承認されています。
エランセの適している部位は?
エランセ注入の効果的な部位としては、額、目の下〜頬の高い位置、口周りの小じわが挙げられますが、ハリ艶が欲しい部位には大抵の部分で施術可能です。
ですが、当院でエランセの使用頻度が高い部位は額と目の下です。
額のシワと言えば前頭筋の動きによってできる表情ジワで、ボトックスが一番に思い浮かびますが、実はエランセも治療の選択肢として優れています。
ボトックス➡︎筋肉の収縮を弱めてシワを作らないようにする
エランセ➡︎筋肉の収縮でもシワがよらないハリのある皮膚を作る
このように作用機序は違う2つの治療を、シワの原因を見極めながら、どちらの治療があっているのかなどご提案させていただいてます。
また目の下の治療にもエランセは効果を発揮します。
青グマ、ティアトラフの段差、ゴルゴラインの改善では良い結果を得ています。ご自身のコラーゲンを増やせる治療になりますので、これまで治療が難しかった目の下の小ジワ改善や肌の内面からのハリ感UPが可能です。
ただし、骨萎縮が進んでいる場合はエランセ単独ではボリュームを補う効果は弱いので、ボリューム補正に適しているヒアルロン酸注入との併用治療を行っています。
→ 目の下のクマ改善!エランセとヒアルロン酸の併用治療についてはこちら
エランセの良さは、肌に光が集まるような艶が生まれることです。額や目の下など、メイクでハイライトを入れたいような部位への注入は満足度も高く、リピートされる方も多いです。
エランセのダウンタイムは?
エランセの注入は、細い筒状の先端が丸いカニューレ(鈍針)を用いて、1箇所の針穴から扇状に皮下へ広げるように注入していきます。局所麻酔薬を混合しますので、施術中の痛みはわずかです。針を使った治療ですので、内出血は起こることがあります。内出血は消退するまでに1、2週間かかります。また、局所麻酔薬の水分が吸収されるまでの数日間は、目の下など皮膚の薄い部位では浮腫が見られますが、自然に消えますので心配ありません。
エランセの経過や治療間隔は?
注入治療というと、直後が一番良くて徐々に効果が薄れていくという理解をされている方が多いのではないかと思います。しかし、エランセはご自身のコラーゲン増生を促し、皮膚の構造から変化させていくというリモデリング作用(再構築作用)が期待される製剤ですので、注入直後よりも2、3ヶ月後のコラーゲン増生が始まった時期以降の方が効果実感は大きくなります。当院で用いているエランセMは2年半〜3年ほどで完全に吸収されますが、製剤が吸収された後も増えたコラーゲンは残りますので、効果持続期間は長い製剤です。
エランセの治療間隔はケースバイケースではありますが、当院での平均的な追加注入のタイミングとしては、初回注入で充分量(両目の下で1cc、額で1~2cc、両頬で2cc程度)を使用した場合は1~2年後に追加注入される方が多い印象です。
追加注入のタイミングはかなり個人差がありますので、お話をお伺いして最適な治療ペースをお伝えしますね。